二臂と八臂の弁天さま
如来・菩薩部には皆無だった女性像容ですが
天部になってようやく明らかな女性像が登場するようになります。
2つの姿の弁才天
弁才天といえば、天女姿のものが有名ですが
腕が8本もある異形系も定着しており、今回はその2種を描いてみました。
見た目以外に、持物も違うので、単純に八臂のはバトルモードの弁才天?
と思いそうですが、そういうワケでもないようです。
妙音弁才天
七福神でも御馴染みの琵琶を持った天女。
親しみを込めて弁天さんと呼ばれることも多いので
仏像に興味のない人でもご存じかと思います。
「あまのはごろも」とも云われる天衣を纏い、琵琶を持っている。
ギターなどの弦楽器を立って弾くには、ストラップのようなベルトが必要なはず。
ストラップをつけている像などは見たこともないので座って弾く前の立ち姿であると想像します。
一般的には弁才天とだけ表記されることが多いですが
楽器ではなく、宝剣と宝珠を持つニ臂像もあるため
また、琵琶ではなく琴を持っている場合もあります。
サンスクリット語でサラスヴァティーは「水(湖)を持つもの」という意味があり
水と豊穣の女神であるともされていることから
弁才天も水との関わりが強く、池に弁天社を設けている寺社も多いようです。
また、古事記に出てくる宗像三女神*8の一柱である市杵島姫神*9と同一とされています。
ご利益:恋愛成就、学徳成就、諸芸上達、福徳施与
裸弁才天
なぜかは詳細不明ですが、弁才天には全裸の像容もあります。
七福神の中にいるときでさえ、弁才天だけが全裸で表現されることもあり
全裸に琵琶だけ持つというのはなんともエロ。。。もといシュールです。
宇賀八臂弁才天
まぁでも天女形に比べマイナーなので
この像をみても弁才天だと気づかない人が多いかもですね?
ただし、初期に伝来した八臂弁才天は、頭に鳥居と神は乗せておらず
持物は弓、矢、剣のほかに斧などで、全て武器だったそうです。
当時の貴族たちには戦勝祈願の対象とされていたようです。
基本的には八臂ですが、稀に宝剣と宝珠を持つ二臂のみの姿もあるので
区別するために宇賀八臂弁才天と呼んでいるそうです。
持物も、一部は宝珠や鉤といった財運系のものに変わり
このあたりから、戦勝祈願以外のご利益が付与されていきます。
ご利益:勝負運、貧転与福、金運・財運開運、立身出世
天女形の弁才天も加わった変化なので、恋愛運も絡んでいるようです。
(おそらく弓矢はキューピッド的役割も兼ね備えているかと)
宇賀神
宇賀弁才天の宇賀とは、弁才天の頭上鳥居奥に鎮座している神様の名前です。
。。。が、宇賀神自身の発祥経緯は不明だったりします。
蛇との繋がり
弁才天の神使は蛇
絵馬などでは弁才天とともに白蛇が描かれていることも多いです。
宇賀神が蛇神であることからも蛇と縁深い存在であるのがわかります。
さらには、弁才天自身が宇賀神のように頭部以外を蛇の身体にした姿もあります。
それとは逆に、頭部のみが3股の蛇に変化した姿まであります。
蛇は、畏怖の対象でもあり、神聖なものとしても崇められてきました。
弁才天は水と豊穣にまつわる神でもあるので
水田の害獣を食べてくれる蛇と結び付けたのかと思います。
ただし、起源元のサラスヴァティーは蛇ではなく孔雀と繋がりがあり
中国でも蛇との関連はないようなので、日本独自の思想でそうなったようです。
白蛇大明神
前述のとおり、蛇は弁才天と繋がりがあるので
弁才天を祀る寺社には蛇神も祀られていることがあり
特に神社で、白蛇大明神や白姫大明神としてお見受けする機会があります。
お寺と違い、基本神社ではご神体を形あるものとしてではなく
断言はできませんが、大明神のご神体本体ではなく
おそらく奥の見えない箇所に依代の鏡があって、それを守る
狛犬ならぬ狛蛇、稲荷社の狐のような存在かと思います。
その他
・弁才天と弁財天の違い最近は、「才」ではなく「財」の字を使って弁財天で書かれることが増えましたが
本来は、弁才天が正式です。
各々の「ざい」の漢字は、諸芸など才能面の「才」、財運面の「財」を表しているで
どちらで書いても問題ありません。
恋愛ごと、芸ごとの対象としてならば、弁才天と書いたほうがいいでしょうね。
まぁ、何に特化(何を願うのか)させるのかによって使い分ければいいかと。
弁天に所縁がある寺社では
・お寺では弁天堂 本尊:弁才天像
・神社では弁天社 祭神:市杵島姫神(像ではなく依代の鏡)としていることが多く
水にまつわる神様なので池の中央やほとり、海辺などに社があることもあります。
ぶっちゃけそれほど信心深くはありません。汗
謂れやご利益などにも興味はありますが、実のとこ一番は造形美や造形仏メインでして。。。
そういう点では神社よりも寺好きだったりします^^;(罰当たりこのうえなしやも💦)
屋内(家)の場合、水まわり関連で、台所・お風呂・トイレが浮かびますが
弁天さまはトイレが管轄らしいです。
昔流行った「トイレの神様」は弁才天のことを指していると思います。(過去記事参照)
余談
天女系を造形するにあたり、まずは女性ヌードBODYを作ってから
あたりをつけて弁才天を描いてみました。
素体は成人女性(といってもアニメモデルのスキャンですが。。。)を参考に作成。
こうやって並べてみると
どうみても初期に描いた真ん中のほうがスタイルがいいのだけど
仏像てきには違和感のあるプロポーションだったりします。
なので、最終的に仏像寄りにスタイル改良しました。(改悪ではなく、改良です!w)
*1:【べんざいてん】
*2:【みょうおん】
*3:【うがはっぴ】
*4:【びわ】イチョウ葉に似た大きな撥(ばち)で弾奏するインドが起源の五弦楽器
*5:【くつ】
*6:【みょうおん】美しい音色という意味
*7:サラスヴァティーという聖なる川の化身であり、芸術・学問などの知を司る
*8:【むなかたさんにょしん】天照(アマテラス)と素戔男(スサノオ)の誓で、天照が素戔男の剣を噛み砕いて生まれた三女神
*9:【いちきしまひめ】縁結びの神として有名
*11:【かぎ】漢字本来の意味は何かを引っかける道具ですが、これは宝物庫の鍵といわれています
*12:【ほうりん】煩悩を打ち砕く。悟りを求める心を得る
*13:よき友人を得る
*14:良縁を得る。出世をかなえる
*15:【ほうけん】煩悩を斬り祓い、魔を切り裂く
*16:意のままに願いを叶える宝の珠
*17:外の敵を避け、追い払う
*18:【うがじん(うかのかみ)】
*19:【ろうおう】年老いた男。おきな
*20:【いなり】
*21:【うかのみたまのかみ】
*22:【よりしろ】神様が宿る対象物
*23:【あうん】