八部衆 欠損部を想像してみたっ!
元々は異教の神であったものが、仏教に帰依したパターンは結構あります。
その中で最も有名(。。。たぶん^^;)なのが八部衆*1ではないかな?と。
八部衆
古代インドの神が仏教に帰依し、仏法を守護する護法善神となった八尊の神。
本来は単神(八尊)に対してではなく
鬼神・戦闘神・音楽神・動物神など八種類の種族のことを指しています。
種族内にはかなりの数の神々がいるため
便宜上、各種族の族長?代表神?の一神を像として表現しているそうです。
単体としてのご利益は不明(無い?)ですが
煩悩や邪魔者から守る仏教守護のご利益があるそうです。
八部衆像としての立体仏は、おそらく興福寺*5にしか無いかと。
(二十八部衆*6像の内、八部衆に相当する仏尊は三十三間堂などの他院で見かけることがあります)
幼少~青年期の容姿で表現されているようで
威厳。。。というよりは、憂いに満ちた表情をしています。
中でも阿修羅像は、認知度が高くかなり有名です。
。。。が、阿修羅以外の八部衆については認知度が低いかも知れませんね。
欠損部の模索
実物は、経年劣化のため、当時の色彩は不明な点が多く
過去に起きた度々の火災などで欠損部位も目立ちます。
中には頭部と胸部以外が焼失してしまった像もあり全体像がわからないものも。。。
今回は、せっかく描く(造る)のだから「完全体はこんな感じだろうか?」と
想像して作ってみました^^
なるべく統一感のでるよう地味目で落ち着いた色合いのカラーリングにしてみました。
実物の鎧や衣には細かな模様が施されていますが
あいにく自身には、それを再現する才がありません。。。あしからずm(__)m
また、各々の像はなんらかの持物*7をもっていたと云われています。
持物の考察
手の形、文献、青年期以降(王)の姿(二十八部衆での持物など)を参考に推察してみる。
像容が幼い姿であるため、阿修羅を除き、武器系持物は意図的に除外しました。
各種族の特徴
8つの種族は、以下の通り。
半身半獣で、人にも畜生にも鳥にも該当しない。
国外では、下半身が鳥のような姿もあり、鳴き声の美しい鳥を神格化させたとも。
帝釈天の眷属の音楽神で、美しい声で歌うといわれている。
なぜかはわかりませんが、帝釈天の眷属の音楽神が多いですね^^;
さて、次は個々の解説や造形について載せてこうと思います。
(注。持物は創作です。あくまで私個人の推測と独断で付け足し造形もしています)
五部浄
梵名不明。
末尾に「天」がついてないやんっ!と思われたかもですが
正確には五部浄居天*19といい、5人の聖者*20を合わせて一尊としたそうです。
なんつんだろ、頭に象をすっぽり被ってるところが
かぶりものの元祖!!って感じで、おもしろいですねw(暴言かしら?^^;)
実物は、頭部と胸部程度しか残っておらず、象の鼻部分も欠損しています。
なので、胴手足は想像で作りました。(まぁ~次に紹介する沙羯羅像の流用ですが💦)
持物については、二十八部衆の五部浄居天は剣を持っているのですが
八部衆のは、幼児のような顔だちをしているので武器類を持たせるには違和感が。。。
ということで、天部の持物でありがち(。。。たぶん)な宝珠と蓮華を持たせました。
沙羯羅
梵名:サーガラ・ナーガ・ラージャ。大海竜王、龍宮の王という意味だとか。
ただ、八部衆のは、幼な顔で少し不安げな表情で愛らしくも見えます。
頭部に蛇が巻き付いています。
右手に剣、左手に蛇を持っているそうですが
武器系除外に徹したかったので、手の形から持物を想像してみることに。
何かを摘まんでるような右手と、太めの何かを掴んでいるような左手。
龍衆は、水との関わりが強いので「水瓶だ!」とパッと思い浮かびました。
摘まんでるほうの手は、蓮華が良さげに思えたのでそうしました。
五部浄で紅蓮華を持たせたので、こちらは白蓮華*25にしよう。
と思ったのですが、白比率が多くなるので青蓮華としました。汗
(というか、沙羯羅を作ったあとで対比させるように五部浄を作ったんですがね^^;)
鳩槃荼
梵名:クンバーンダ。 クンバは瓶という意味。
もとは、男をそそのかし、瓶のような性器で精気を吸い取る悪鬼。
上文からもわかるように元来クンバーンダは女性しかいない。とされてたのですが
男女の区別がされ、黒い肌をした馬頭の人間の姿をした怪物とされたそうです。
男女区別されてからは、人の睡眠を妨げて災難を引き起こす厭魅*28鬼と云われ
その後、釈迦に改心させられ善神となった。
四天王 増長天の眷属でもある。
いかにも夜叉てきな形相ですが、八部衆のは馬頭っぽくはないですね^^;
両手を広げている点と、胎蔵界曼荼羅*29に鈸*30を持っている馬頭姿があったので
音楽神という記述はありませんでしたが、それにしてみました。
ただし、善神となっているので、妙鉢(清めの法具)としました。
乾闥婆
梵名:ガンダルヴァ
香を食べるとあるので物静かな性格かな?と思いきや、女好きの肉欲化だとかw
それでいて、処女の守護神という。。。掴みどころのないところもあります。
獅子を被り、両目はほぼ閉じています。(金色の獅子という記述があったので金色にしました)
帝釈天の眷属で音楽神とあるのですが
どのような楽器を持っていたのかがいまいちわからなかったので
二十八部衆の乾闥婆王がもつ持物が、法輪と宝経であり武器類ではなかったので
それにしました。
阿修羅
梵名:アスラ
「阿修羅像といえばこの姿!!」といわれるほど著名であり
仏界のアイドル的な扱いもされるほど女性ファンが多いようです。
。。。が、本来の阿修羅はこのような美少年?ではなく
三面六臂には変わりありませんが、三面とも憤怒相の荒々しい姿をしています。
もとは悪魔みたいに唄われていますが
古代インドでは太陽神として崇拝されていた時期もあり、善神だったそうです。
神々(天衆)をも超える力を持ち
帝釈天に敵対したため、魔族てきな扱いをされたようです。
怒った阿修羅が帝釈天に戦いを挑むことになったとのこと。
のちに、舎脂は帝釈天と和解し正式な妃となるのですが
いつまでたっても許さず戦いを挑んだため、阿修羅は天界追放となったそうです。
。。。でもこれ、娘の父親だったら、怒って当然だし絶対許せない。と思うんだけどなぁ~。
釈迦に、過去を水に流し、赦すことの大切さを説かれ、改心して護法善神となります。
実像には、欠損部分が無いようにも見えますが
よくよく見ると肩の衣?右部分が宙ぶらりん。。。欠損しているように思います。
(上図の欠損箇所を補強しないと、肩の衣が後ろにずり落ちちゃうかと思うのです。)
いまいち上手く描けませんでしたが、三面の各面は表情が異なっています。
沓*39ではなく、板金剛を履いています。
持物については、真手*40は合掌、第2手は弓矢、第3手は太陽・月と、文献どおりにしました。
迦楼羅
梵名:ガルーダ
鳥頭人身像のほかに、鳳凰のような鳥型、不動明王の後ろにある炎そのもの
というように、迦楼羅には多形態があるようです。
遠目では、実像に欠損箇所が無いように見えますが
頭部のトサカ部分頭頂部が欠損しています。
自分はトサカの延長として作りましたが、他の像のように髪の毛を束ねていたかも知れませんね。謎
二十八部衆の迦楼羅像には翼があり、鳥頭人身で横笛を吹いています。
そちらのは若干カッパっぽい顔なので、私的には八部衆の迦楼羅のほうが好きかも^^;
。。。ただ、迦楼羅には翼があるべき!と感じたので
もともと造形されて無かったと思いますが翼を追加しましたw
音楽神とは明記されてませんでしたが
二十八部衆像のほか、文献には「竜笛を吹く」とあったので持物はそれにしました。
緊那羅
梵名:キンナラ
実像は、右肘から先が欠損しています。
経年劣化のため色落ちが激しく一見すると人っぽく見えたりします。
が、頭に大きな角が生えていて、目が3つもあります。
二十八部衆の緊那羅王は、人と同じで、角はなく、目も2つです。
(どちらかというと、三眼一本角が標準?らしいですが。。。)
緊那羅王は鼓を首からぶら下げて叩いているので持物はそれとしました。
ちなみに、緊那羅には男女で容姿が異なり、漢字表記は同じですが
- 男性はキンナラで半身半獣。
- 女性はキンナリーといい美しい天女のような姿をしているそうです。
美声で歌うというのはキンナリーのほうかもしれませんね^^;
畢婆迦羅
種族の摩睺羅伽にはマホーラガという梵名がありますが、畢婆迦羅の梵名は不明。
この像だけ髭を蓄えているので、八部衆の八尊の中で唯一の老人なのかも?
大蛇を神格化させたということですが、どうみても仙人?老人のようにみえ
強いていうなら、胸当ての鱗で蛇っぽさを表現してるだけにしか見えないですね^^;
実像には無いですが、文献にもとづき首に鱗を追加しました。(ほとんど見えないけどねw)
二十八部衆には摩睺羅王と畢婆迦羅王の2体があり
- 摩睺羅王は、五眼で蛇を携え、琵琶を弾いています。
- 畢婆迦羅王は、髭はなく、剣を携えています。
持物を琵琶にしようかな?とも思ったのですが
興福寺の公式HPには横笛を持っていたと記述されていたため、横笛にしました。
(まぁ、手の形からして琵琶持ちではなさそうですしね^^;)
。。。ただ、迦楼羅と同じ竜笛にするのは能がないので、能管にしましたw
竜笛も能管も、見た目はほとんど変わりませんが音色は全く違うそうです。
(正直なとこ、自分のような素人には和楽器の横笛はどの種類も同じ形に見えますけどね^^;)
私的に云々
阿修羅像だけが独り歩きしている感が否めないかなと。
言い方悪いけど「8人グループの1人なんだよ。」と言っても
ピンと来ない人が多そう。。。
実際に八部衆像として拝見してみても
阿修羅だけが異質で浮いて見えてしまうのは気のせいでしょうか?
三面六臂という異形なので当然そう感じるっしょ。。。まぁそうですけどね。
僕が感じるのはそこではなくてね
阿修羅だけが鎧を纏っていない
しかも沓ではなく、まるで温泉旅館の板下駄のようなものを履いているw
なんつんだろ。。。
例えが悪いけど、葬式に一人だけアロハシャツで来た!ってくらい浮いて見えるwww
他の七尊が鎧武装しているのに、阿修羅だけ普段着?ラフな格好なんですよ。
本来の阿修羅は、修羅の中の修羅!バリバリの闘神なワケで
その阿修羅だけが鎧もつけず。。。さらには美少年化しちまってるのがなんとも奇妙。
や。僕自身もこの阿修羅像も結構好きな仏像なんですけどね。。。なんだか不思議。
本来の、荒ぶる形相のいかつい阿修羅ではなく
この美少年阿修羅のほうが定番のようになってしまってるのがなんとも。。。
あれか?「カッコいいは正義!可愛いは正義!!」ってやつか?w
光明皇后*45が、幼くして亡くなった我が子を弔うために作らせたため。
あのような少年フェイスになったと言われてたりもしますが
だとしても、なぜわざわざ阿修羅をチョイスしたのでしょうかね。謎
八部衆を描くまではさほど気にしてなかったんですが
異形系の阿修羅と迦楼羅は以前から私的に好きな仏像の上位にいましたが
いざ描いてみると、「驚いたようなハッとした。はたまた何とも言えない悲しげな顔」
そんな沙羯羅が断トツの1位!八部衆の中で一番好きになってしまったかもw
思わず「どうしたの?大丈夫?」って守ってあげたくなるような可愛さw
こんな思考の私は。。。やっぱり変人なのでしょうかね^^;
八部衆の迦楼羅に翼をつければ。。。ほんとカラス天狗にそっくりかもw
緊那羅は男女で見た目が全く違う。。。というもの
こと仏像に関しては、往々にしてありがちですが
「男女で」という括りは結構珍しいかも知れませんね。
身も蓋もないことを言っちゃえば、そんなもん想像上のもんだから
なんでもありですやんっwwwってなるんだけども
自然界においても、実際そういう生き物は結構いたりするんですよねw
雄には角があるとか派手な色をしてるとか。。。そういう次元を超えてて
海の生き物や昆虫に多いのですが、例えばチョウチンアンコウなど。
雄雌で似ても似つかない姿をした生き物がいますからね。(性的二形というそうです)
太古に、そのようなことがわかっていたとは思えないですが
まるでそれを示唆したかのような表現があったことに驚きました。
。。。で、ここにきてややこしく感じたのが
如来・菩薩・明王・天 という位があり、阿修羅なども天部の位置づけというところ。
あれかな?
たぶんこういうことなんだと認識してますが。。。間違ってるやろか?汗
とまぁ~、八部衆について書いてきましたが
興福寺の阿修羅像きっかけでメジャー級になったんだけど
実のところ仏教全体でみればマイナーでレアな存在だったりもするそうです^^;
*1:【はちぶしゅう】
*2:【けんぞく】従者
*3:【てんりゅうはちぶしゅう】
*4:【はちぶきしゅう】
*5:【こうふくじ】
*6:【にじゅうはちぶしゅう】千手観音の眷属とされる28種族
*7:【じぶつ】
*8:【てん】
*9:【りゅう】
*10:【やしゃ】
*11:【けんだつば】
*12:【あしゅら】
*13:【かるら】
*14:【きんなら】
*15:【まごらが】
*16:【ごぶじょう】
*17:【にょいほうじゅ】意のままに願いを叶える宝の珠
*18:【ぐれんげ】
*19:【ごぶじょうごてん】
*21:【さから】
*22:【しょうれんげ】
*23:【すいびょう】穢れを消す甘露水【かんろすい】が入っている
*24:【しゃがらおう】
*25:【びゃくれんげ】
*26:【くばんだ】
*27:【みょうばち】邪気を払い清める法具。
両手に持って打ち合わせたり擦り合わせたりして音を出す、シンバルのような仏具。
*28:【えんみ】まじないで呪い殺すこと
*29:【たいぞうかいまんだら】
*30:【ばつ】シンバルのような楽器(これで睡眠妨害してたのかな?)
*31:【ほうりん】煩悩を打ち砕く。悟りを求める心を得る
*32:【ほうきょう】仏の教えを得る
*33:【いたこんごう】サンダル風の履物
*34:【げっしょうまに】熱や毒の病をいやす
(中に居るのは、玉兎【ぎょくと(月に住む架空のウサギで、薬草を砕いて仙薬をつくっている)】)
*35:【にっしょうまに】闇を照らす
(中に居るのは、八咫烏【やたがらす’(太陽の化身である三本足のカラス)】)
*36:【ほうせん】よき友人を得る
*37:【ほうきゅう】栄官を増す。良縁を得る。出世をかなえる
*38:【しゃちー】
*39:【くつ】
*40:【しんしゅ】第1手。本来の手
音色が「舞い立ち昇る龍の鳴き声」と例えられたのが名前の由来。
*42:【つづみ】
*43:【ひばから】
*44:【のうかん】能などで使う横笛。
内径に狭い部分が作られており、独特の音色が出せるようになっている。竜笛よりも吹奏が難しく奏者の個性が出る。